ロックダウンに対するジャズからの2つの反応

Dezron Douglas and Brandee Younger「This Woman’s Work」

ニューヨーク州で「不可欠でない仕事」による外出が禁じられた2020年4月7日以降、ベーシストのデズロン・ダグラスとハーピストのブランディ・ヤンガーは毎週ハーレムの自宅から生演奏を配信していた。その演奏曲を集めたアルバム『Force Majeure』(2020)からの一曲。

彼らの演奏を聴いていると、ハープとウッドベースというのは人の手の感触や温かみを伝えるのに長けている2大楽器であるように思えてくる。ジャズはもともと社交のための音楽として生まれたが(アフリカ人奴隷たちがニューオーリンズのコンゴ・スクウェアで日曜日ごとに開いていた青空市場での演奏会に端を発する)、緊急事態においてなおさら求められるそのルーツに彼らは忠実に立ち返っている。

「This Woman’s Work」の原曲は映画『結婚の条件』(1988)のためにケイト・ブッシュが作ったサウンドトラックで、病院で妻の出産を待つ夫(ケヴィン・ベーコン)が母子の容体が思わしくないことを聞かされた後に流れる。突如として2つの大切な命が失われる可能性に直面した夫は、妻に対してこれまでしてあげられなかったことや言えなかった言葉をいくつも思い出し、彼女がなんとか生きて自分のもとに戻ってきてくれることを願う。現在の状況でこの歌詞はまた少し違った意味を持って響く。

Chris Potter「Drop Your Anchor Down」

一見普通に感じのいいジャズ・アンサンブルに聴こえるこの曲。だがジャズの分野ではかなり珍しいことが起こっている。90年代から主にテナー・サキソフォニストとしてツアーに明け暮れてきたクリス・ポッターが、すべての楽器を一人で演奏しているのだ(ベースから順番に録音していったという)。

誰かとともに音を奏でることすら難しくなってしまっても、音楽の構造を借りて人はコミュニティにおける心の通い合いを夢見ることができる。バスクラリネット・ソロの重厚な後味をすっきりと拭い去るように始まるフルート・ソロは、同じ人が演奏していると思うとちょっと笑ってしまうけれども。アルバム『There Is A Tide』(2020)から。