Tei Shi「When He’s Done」

アルゼンチンでコロンビア人の両親のもとに生まれ、コロンビアとカナダで子ども時代を過ごしたのちボストンのバークリー音楽大学に入学、現在はニューヨークを拠点として活動するテイ・シのセカンド・アルバム『La Linda』(2019)からの一曲。タイトルは「彼が飽きたら」という意味。

「僕、毎日ギターを弾いてるんだよね」という同級生 (?) のひょんな一言にふと興味を惹かれ、そこから転がるようにして恋に落ちてしまう女の子の歌。日ごとに募るこの想いを伝えないままでいるのはツラすぎる。でももし彼と付き合って、飽きられてしまったらどうしよう。だって恋人に捨てられるとボロボロになるって言うし…。そんな「進むも地獄、退くも地獄」の片想いの心情がゆったりとした三拍子に乗せて歌われる。

場面設定そのものは素朴である。だがジャクソン5時代のマイケル・ジャクソンを思い起こさせるボーイッシュな歌声で歌われるコーラス部は、J-POP的とすら言えそうなほどの爆発的な歌の力で恋の切なさを見事に捉えていて、聴く者は否応なしに彼女の気持ちに同調させられてしまうことになる。