昨年始動したばかりのマイアミ出身のポップ・デュオ、マグダレナ・ベイのEP『A Little Rhythm and a Wicked Feeling』(2020)からの1曲。メンバー自身は自分たちの音楽性を「未来の90年代先祖返りスペースポップ(future ’90s-throwback space pop)」とややこしく命名している。
ティーンエイジャーの頃はほぼプログレッシヴ・ロックしか聴いていなかったというプロデューサーのマシュー・ルーウィンが作る「Good Intentions」は、メインストリームのダンスポップと似ているようで何かが微妙に違っている。途中までの盛り上がり方から想像するよりもはるかにおとなしく始まる、陰のあるサビ。そして主人から許可を得た犬のように時間差で入ってくる楽しげなビート。こうした「外し」の手法それ自体はありふれたものだが、「脳裏に刺さった欠片たち/非難の上にも重なる咎め/ううんいいの、大丈夫/そのあいだも私たちはずっと善意(good intentions)を持ち続けていたから」という相反する2つの感情を含んだ歌詞と調和して、エレクトロポップが陥りがちな情緒的な浅薄さを免れている。
「ダンス向きにできていない人間がフィジカルになるには(how to get physical when you’re not made for dancing)」とEPのオープニング曲「How to Get Physical」でも歌われているように、マグダレナ・ベイはもともと素直に踊れないタイプの人たちなのかもしれない。しかし逆に言えば、いかにも踊れそうな人が踊っても何も面白いことはない。それは普通である。ダフト・パンクの凄さのひとつは彼らが感情も肉体性もないロボットをトラック上で踊らせたことだと思うのだが、この曲の魅力もまた「踊れないはずなのに踊っている」という矛盾の中にあるように感じる。